定期レポート2011年10月

ソフィア・アイ :人材開発と“創発”

 

今年もノーベル賞の季節が巡ってきました。
わが国には、特に自然科学の分野では受賞が極めて有力な科学者が10名以上もいるそうですから、日本もまだ捨てたものではありません。

 

さて、ノーベル賞というと、「ごく一握りの天才の偉業を讃えるもの」。したがって、日常的な教育、まして企業内での人材開発とは無縁と考えられがちですが、果たしてそうなのでしょうか。

ノーベル賞にはいくつかの受賞分野がありますが、「平和賞」を除けば、ほぼ稀有な発明(もしくはそれに関連する発見)に対して与えられます。
では、「発明」とは、一体どのような知的活動なのでしょうか。
単に、「無」から「有」を生み出すことでしょうか。

 

比較的最近の用語で、「創発」(emergence)という言葉があります、それは、簡単に言うと、複数の人材(またはナレッジ)の関わり合いの中から、既存のものとは異なる新しいナレッジ(知識、技術、知恵等)やそれを活用した成果が生まれることです。
多くのノーベル賞受賞例が示しているように、その業績の背景には、膨大な研究者達の長年にわたる研究成果の蓄積があります。例えば、数年前にノーベル物理学賞を受賞した益川教授は、「自分の受賞自体はさほどうれしいわけではないが、師であり多くを学んだ南部教授との同時受賞には深く感激する」旨のコメントを述べていました。益川教授の例はノーベル賞でもいわば一般的です。約10年前の化学賞受賞者・田中耕一さんに至っては、企業の研究所に所属する普通の会社員でした。要するに、ノーベル賞といえども一人の天才単独の偉業というのは極めて稀なのです。
この事実からも、いわゆる発明は、創発の一種であることが分かります。

 

ノーベル賞の最多受賞国は、言わずと知れたアメリカです。日本の何倍もの受賞者を輩出しています。日本人受賞者の中にも、アメリカの大学や研究機関に所属する人が多くいます。
その背景には、アメリカ人そのものが優秀というようりも、研究者同士のチームワークや、研究を支援する資金面を含めたマネジメントの仕組みがあります。つまり、“創発”を誘発する仕組みにおいて、アメリカは秀でているということなのです。

 

このように整理してみると、途方もなく縁遠いものに見えたノーベル賞(※及びその授与対象としての業績)と企業での人材開発(もっと言えばビジネスそのもの)とは、決して無縁ではないことが見えてきます。
なぜなら、日々“創発”(既存の資源を利用して新たな価値を生み出す)を続けることによってのみ、企業は存続することができるからです。
多少意味を広げて言えば、人の成長とはそれ自体が“創発”でもあるのです。

 

ところで、多くの企業で日々行われる教育に眼を向けると、“創発”は決して重視されているとはいえません。

テーマ別にカリキュラム編成された集合研修に多額のコストが投じられていることからも分かるように、既成のナレッジ(=形式知)を普及させるだけの「共有」に、主要な関心は集中しています。
その背景には様々な事情がありますが、教育の戦略が、現場サイド(=事業部門)よりも供給サイド(=教育部門)の視点で立てられていることも大きな要因になっていると思われます。

 

さて、皆さんの会社の教育では、“創発”は実践されているでしょうか?
弊社が提供する、“創発”型人材育成の仕組みにも、ぜひご注目ください。

 



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