定期レポート2011年4月

ソフィア・アイ :問われる組織力:これからの経営環境への指針

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、経営環境のみならず、私たち日本人
の世界認識にも大きなインパクトを与える出来事となりました。
このたびの震災により犠牲となった方々のご冥福をお祈りすると共に、被災され
た皆様の一日も早い復興を、あらためて心よりお祈り申し上げます。

 

さて、津波による大災害と並行して、福島第一原子力発電所の危機が依然として 深刻な状況です。報道情報からは、4つの原子炉そのものに何らかの損傷が生じ ており、その結果放射能の漏洩が起こる重大事態に至っているのはと懸念されます。

 

また、こうした国家的な重大事態への対応が、いまだに一民間企業である電力会 社を中心に行われれているのも非常に心配なところです。そのため、情報の集約 や公開にも支障がある上、次々に発生する事象への対応策が後手後手に回っている ように見受けられます。

 

ところで、電力会社は会社形態上民間企業ですが、一般企業の経営とは基本的に その性格が異なります。電力事業は近年「自由化」が進んでいるとはいえ、電力 会社が一定エリアへの電力販売を単独で担ういわば「地域独占的企業」である ことに変わりはありません。そのため、電力事業は、「自社の商品をできるだけ 多く販売して、利益の拡大を目指す」ようには運営されていないのが実情です。

 

今回の関東エリアにおける「計画停電」に象徴されるように、電力の不足が見込 まれる時には、電力会社は多額の広告費を投入してでも、節電(つまり自社商品の 購入を控えること)を呼びかけます。また、火力発電の原燃料であるLNGや 石油が高騰する等してコストが上がると、電力料金の値上げを申請して採算を 確保します。このようなことができるのは、ほぼ電力やガスといった地域独占型の エネルギー企業だけです。

 

そうした地域独占形態の是非はともかくとして、このような事業のあり方は、当然 企業組織の体質に大きな影響を与えます。単純にいうと、一般企業で暗黙の前提と なっている「利益追求」という共通目的がなく、しかも公共団体でもないので、 それに代わる目的を組織が共有しにくいわけです。

 

経営学者のバーナードは、組織が組織たる要件として、?共通目的、?構成員の 目標への貢献意欲、?構成員間のコミュニケーションの3つを挙げています。
この中の肝心の共通目的がなくなれば、自ずと組織は危うくなります。 その証拠に、近年のエネルギー系企業では、検査情報の隠蔽をはじめとして、組織 の「内向き体質」に起因する不祥事が度々問題となってきました。今回の福島危機 にも、その影が色濃く漂っています。

 

福島危機はまさに国家的危機であり、福島原子力発電所の一刻も早い安定化を強く 願うと共に、国民全体がそのための環境作りに協力しなければならないでしょう。
その一方で、企業組織が明確な共通目的、経営方針を持ち、それを共有する努力を 続けることの意味を、このような危機的状況の中でこそ今一度具体的に問い直し たいものです。

 



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